イメージングや次世代シーケンスなど、生命システムを定量的に計測しうる技術の発展とともに、複雑な生命システムの動態を解析・理解する方法として、物理的な生命現象のみかたや数理に基づく記述の重要性が近年大きく高まっている。本授業では、細胞を単位とした生命システムを扱う数理的・物理的な手法や関連するトピックを体系的に概説する。 本授業は、反応速度論を基礎として展開する。 速度論をもとに、細胞レベルでの生体システムの記述に必要な各種概念を導入し、また反応系の熱力学的な性質についても触れる。 その後、具体的な細胞システムの実例を紹介しつつ、反応系の組み合わせから様々な機能性、例えば様々な変動への非線形性応答性や、記憶や振動などの動的な現象、そして頑健性のような非自明な現象が現れる背後にあるメカニズムを解説する。 受講者の知識に合わせて、決定論的な理論を中心に授業を構成するか、よりアドバンスドな確率論などを含めた内容を加えるか、判断する。 具体的な実験的知見は主に単細胞生物の知見を主に紹介するが、関連する多細胞生物の現象についても言及する予定である。