物質基礎科学特殊講義V

2019

細胞現象の機能とロバスト性

イメージングや次世代シーケンスなど、生命システムを定量的に計測しうる技術の発展とともに、複雑な生命システムの動態を解析・理解する方法として、物理的な生命現象のみかたや数理に基づく記述の重要性が近年大きく高まっている。本授業では、細胞を単位とした生命システムを扱う数理的・物理的な手法や関連するトピックを体系的に概説する。 本授業は、反応速度論を基礎として展開する。 速度論をもとに、細胞レベルでの生体システムの記述に必要な各種概念を導入し、また反応系の熱力学的な性質についても触れる。 その後、具体的な細胞システムの実例を紹介しつつ、反応系の組み合わせから様々な機能性、例えば様々な変動への非線形性応答性や、記憶や振動などの動的な現象、そして頑健性のような非自明な現象が現れる背後にあるメカニズムを解説する。 受講者の知識に合わせて、決定論的な理論を中心に授業を構成するか、よりアドバンスドな確率論などを含めた内容を加えるか、判断する。 具体的な実験的知見は主に単細胞生物の知見を主に紹介するが、関連する多細胞生物の現象についても言及する予定である。

スケジュール

  • 1日目:決定論的化学反応論の基礎と応用
    • (1) 定量的生命科学、化学反応論基礎
    • (2) 反応系の縮約と非線形現象
    • (3) 微分する細胞:完全適応現象
  • 2日目:細胞のロバスト性から確率現象へ
    • (4) 細胞内ゆらぎへのロバスト性:絶対濃度補償性
    • (5) 生体の確率現象と確率反応論基礎
    • (6) ゆらぐ環境での細胞の情報処理
  • 3日目:確率性へのロバスト性とゆらぎの進化的意義
    • (7) ゆらぐ環境での細胞の情報処理
    • (8) 進化と情報のゆらぎ関係
    • (9) 細胞系譜と数理(最新の話)

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