システム生物学や神経科学に代表されるように、複雑な生命システムの動態、特にその確率的な性質や情報処理機構を解析・理解するために数理が果たす重要性は、近年大きく高まっている。
本授業では、細胞を単位とした生体システムの確率動態と情報処理的な側面を扱うための数理的手法や関連するトピックを概説する。
現象としては細胞表現型の確率的変化、その確率性の原因となる様々な内因的・外因的ノイズ、ノイズを抱えながら様々な情報処理を実現する非線形ダイナミクス、過去の経験から個々の細胞や個体レベルで適応する学習現象、そして細胞や個体の集団による進化的な適応の問題を取り扱う。
数理的な側面としては、化学反応論、力学系、分岐、点過程、拡散過程、Master方程式、Fokker-Planck方程式、確率微分方程式、経路積分、非平衡熱統計物理、情報理論、情報幾何、学習理論、進化理論などのトピックが含まれる。
理論を応用する生物学的現象としては、遺伝子発現ゆらぎ、選択的な細胞応答、細胞の運命決定、発生と位置情報処理、細胞走性と化学勾配感知、確率環境下での増殖・進化、などを取り上げる予定である。
なお必須ではないが、より生物的な側面に重点をおき決定論的なモデリングに限定した、理論生物学 (S1:火4:0560540, 47240-45)も合わせて受講することを勧める。
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