数理情報学特別講義 Ⅳ

2018

確率細胞現象の数理

システム生物学や神経科学に代表されるように、複雑な生命システムの動態を解析・理解するために数理が果たす重要性は、近年大きく高まっている。 本授業では、細胞を単位とした生体システムを扱う数理的な手法や関連するトピックを概説する。 特に細胞の確率的な挙動を扱うための数理的手法に重点をおき、様々な内因的・外因的ノイズを抱える細胞システムにおける非線形ダイナミクスと情報処理、そして細胞集団による進化の問題を取り扱う方法論を示す。 数理的な側面としては、力学系、分岐、点過程、拡散過程、Master方程式、Fokker-Planck方程式、確率微分方程式、経路積分、非平衡統計物理、情報理論、情報幾何などを基本とした細胞内の確率的動態の理論が含まれる。 理論を応用する生物学的現象としては、遺伝子発現ゆらぎ、選択的な細胞応答、細胞の運命決定、発生と位置情報処理、細胞走性と空間方向感知、確率環境下での増殖・進化、などを取り上げる予定である。

スケジュール

  • 4/07:ガイダンス
  • Introduction:確率的な細胞現象とその数理
  • 点過程と確率的化学反応の時間発展
  • 化学マスター方程式と分布の時間発展
  • ノイズ励起現象
  • マスター方程式のCumulant展開
  • 遺伝子発現ネットワークとゆらぎ・フィードバックの流れ
  • 化学ランジュバン方程式と経路積分
  • 確率的な生体内システムの情報理論的理解
  • 情報復号と細胞の運命決定
  • Filtering Theoryと確率的情報処理
  • 表現形ゆらぎと細胞増殖
  • 表現形選択と情報の進化的価値
  • 生体情報処理における数理的課題
  • レポート課題

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