理論生物学

2020

細胞システムの数理:非線形現象からロバスト性まで

イメージングやシーケンシングなど複雑な生命システムの動態を定量的に計測・解析できるようになっていることを背景に、そのデータを理解するために数理が生命科学において果たす重要性が大きく高まっている。

本授業では、その基礎となる細胞を単位とした生体システムを扱う数理的な手法や関連トピックを概説する。まず細胞システムの数理モデルの理解と解析に不可欠な反応速度論の導入を行う。次にそれを応用した生体機能の解析例について、実験的背景と数理的なモデルを合わせて講義する。

モデルは決定論的なモデルに限定し、数理の技術的側面よりは、いかに生体機能の理解に数理モデルが活用できるのかに重点を置く。 対象とする細胞機能としては、細胞の運命決定、分子認識、環境シグナル感知、細胞記憶、細胞振動現象、外環境への適応、内因的変動へのロバスト性などの問題を扱う。具体的な実験的知見は主に単細胞生物のそれを紹介するが、関連する多細胞生物の現象についても言及する予定である。

なお、本授業では微分方程式に基づく決定論的な解析のみを扱う。1細胞のゆらぎやその解析に必要な確率的なモデリングについ学びたい場合には、「数理情報学特別講義 Ⅳ:確率生命現象と情報処理の数理」(4820-1029)の履修をすすめる。

講義内容とスケジュール

  1. ガイダンス, 細胞システムの数理(Introduction):4月21日(予定)


以降、下記よりトピックを受講者のバックグラウンドなどを考慮して選択する:

  • 反応速度論・微分方程式・フィードバックループ・反応の物理化学
  • 反応過程の縮約と実効的方程式(Michaelis-Menten, Hill 方程式)
  • 細胞反応と非線形応答と細胞の分子認識(シグナル伝達系・免疫応答)
  • 非線形応答と非平衡性(非線形応答の熱力学的コスト)
  • 細胞の記憶と多安定状態(遺伝子発現スイッチ)
  • 振動現象と負のフィードバック(概日リズム)
  • 動的な入力への細胞応答(動的入力に誘導される細胞分化)
  • 環境変動への適応と化学走性(完全適応)
  • パラメータ変化へのロバスト性(温度補償現象)
  • 分子濃度変化に対するロバストネス(絶対濃度補償性)
  • 自己複製にともなう拘束と普遍性(細胞の成長則)
  • 理論生物学的トピック1(生命現象の情報物理学)
  • 理論生物学的トピック2(定量免疫学)

リンク

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