学生のためのプレゼンテーションガイド 2019
このノートは、定量生物学研究室の大学院生、そして研究員向けにプレゼンテーションのポイントをまとめたものです。
プレゼンテーションのデザインの仕方とか細かい部分についての解説本などはよく見られるようになりましたが、そもそもプレゼンテーションの構成や準備の時に気をつけなければならないメタな知識について、あまりまとまっている成書やサイトが見つからなかったので、作成しました。
解説文章というよりは、チェックリスト的なもののために散文的になっています。もしかしたら、個々のシチュエーションでのプレゼン形式に合わせて、そのうち文章をまとめることもあるかもしれません。
文責は小林。また作成に当たり、二階堂 愛氏、舟橋 啓氏、そして定量生物学の会のメンバーに助言を頂きました。
1. 概要: プレゼンの多様性と重要ファクター
プレゼンテーションを作成する時に気をつけることをまとめます。プレゼンは実は多様な形態があり、プレゼンの「目的」「聴衆」そして聴衆が発表者に持つ「信頼度」、さらには「発表時間」に依存してどういう内容にすべきかがある程度決まります。以下ではそれを概説します。
1-1: プレゼンテーションの多様性
プレゼンテーションと一概にいっても様々な形態があります。
実はその内容に応じて必要とする情報が大きく異なるので、それを解説します。具体的なプレゼンの機会は以下の通りです:
- 大学院生:ラボミーティング; 輪講(サーベイ); 輪講(研究進捗発表); 学会発表; 修士・博士論文審査; 大学院入試面接; 学振面接;
- 研究員:ラボミーティング; チュートリアル; 学会発表; 学会招待講演; 人事面接; 予算審査面接
- PI:プロジェクト中間報告会; 授業; 学会招待講演; 一般講演; 企業向けやVC向けのセミナー; 大型プロジェクト予算面接
1-2: プレゼンテーションの目的
目的に応じてプレゼンテーションの形態は変わります。発表に盛り込むべき内容には、背景知識、研究過程、新規研究成果、過去の実績、今後の計画、研究の波及効果、など様々な要素があります。同じ結果を発表するときでも、目的に応じて最も重視すべき要素や内容、そして情報の提示の仕方が異なります。以下では代表的なプレゼン形態をその目的に応じてカテゴリー化しました:
- 進捗共有
- ラボミーティング:主に「研究経過」の共有と「今後の計画」へのフィードバックをもらう
- 輪講(研究発表):「研究過程」および「新規成果」を紹介する。特に大学院の輪講では「研究過程」が重要
- 研究プロジェクト中間報告会:研究成果が出ているか、そのための研究過程が予定通り実施されてるかが評価される。
- 知識共有
- 輪講(サーベイ):「背景知識」を該当論文を中心に広く紹介する
- チュートリアル:あるトピックについて、背景や基礎知識などを概説する。
- 授業:チュートリアルよりさらに基礎的なところも含めて体系的に構成される。
- 研究成果の発表 タイプ1:研究結果の提示とアピールが中心
- 学会成果発表:「新規研究成果」を中心に提示する。
- 学会招待講演:「背景知識」から「新規研究成果」、「今後の展望」までを広く外観
- 研究成果の発表 タイプ2:発表者の業績の提示とアピールが中心
- 修論・博論発表:学生が達成してきた内容や過程などすべての要素をバランス良く配置。修士などは博士よりも「研究結果」よりも「研究過程」つまりどう問題にアプローチしてきたが重視される
- 学会招待講演:「背景知識」から発表者の研究の個人的動機、研究の変遷を含め「研究成果」に至る経緯をまでを広く外観
- 研究遂行能力と研究プランの発表:研究者の業績と計画のアピールが中心
- 博士課程面接:これまでの研究内容を提示して、博士課程相当の研究能力を示すことが重要。そのうえで「入学後の研究計画やビジョン」を提示
- 人事面接:「これまでの研究実績」やその背後にある「研究の一貫性」が大事。それらを提示した上で「今後の計画」や必要なら「所属機関への波及効果」をアピールする
- グラント面接:「過去の実績」をもとに「研究実施能力や実現性」を示すことが重要。そのうえで、提案プランの「計画」や「波及効果」、またグラント自体の「戦略目標への貢献など」をアピールする。
1-3:プレゼンテーションのオーディエンスと環境
「誰が何を期待してあなたの話を聞くのか?」「 オーディエンスがどんな事前知識を持っているのか?」「何を面白いと思うのか?」に基づき、特にイントロダクションや結果の提示の仕方や展望は変わります。
例えば、聴衆が、数理系なのか? 生物系なのか? 物理系? それらの混合か? 全く分野外や完全に 一般の聴衆なのか?などの条件に応じて、発表者が聴衆に期待できる事前知識の範囲を明確に意識して、情報を提示する必要があります。
また発表がLab内の発表なのか、 学会での発表なのか、 面接や 一般むけのものなのか、でオーディエンスが発表者に(提示してくれると)期待している情報は変わります。この期待される情報に応じてプレゼンテーションの内容を取捨選択する必要があります。
1-4: オーディエンスの発表者への信頼度
あまり意識されませんが、オーディエンスの事前知識の中で「発表者(あなた)に対して事前にどれだけ信頼度を持っているか」は大きく発表や特に手法などの提示の仕方に影響を与えます。すでに高い信頼度を担保できていれば手法を概略的にして結果を中心に話せますが、信頼度が担保できない場合、正確かつ信頼できる手法で結果や成果を導いていることを発表の中で示す必要があります。
主要な結果や主張とともにこの信頼度を担保する情報がうまく提示できないと、結果や主張を聴衆に受け入れてもらえない、ということが起こります。これは特に学会発表や面接などで重要になります:
- 信頼獲得が不要な発表:招待講演、よく自分が知られている分野での研究発表、一般講演、チュートリアル
- 手法に関する信頼獲得が必要な発表:学生の発表全般、新規参入分野での研究発表
- 業績や能力に関する信頼獲得が必要な発表:面接全般
1-5: 発表時間とスライド数
聴衆が一定期間に受け取れる情報量は限界があり、それに合わせてスライド数も調整が必要です。発表時間に応じたスライドの枚数の目安は大体以下の通りです:
- 10分 :10~15枚:面接、学会口頭発表
- 15分 :15~18枚:面接、学会口頭発表
- 20-25分 :25枚以下:面接、学会招待発表、修論発表、輪講
- 30-45分 :30枚程度:面接、学会招待発表、博論発表、輪講
- 60分 :40枚以下:人事面接、学会招待発表、授業
- 60分以上:1hr あたり30枚程度:授業
- ポスター :学会発表
これ以外に想定される質問に対する答えや補足スライドを用意があります。特に面接などではそれらの準備は必須です。
1-6: 準備とスケジュール
発表の準備時間は、経験値と発表の重要度に依存します。特に発表練習は入念にやる必要があります。発表は練習でしかうまくなりません。
発表の準備は「スライド完成→発表練習→本番発表」の単純な一方向カスケードではありません。発表の練習をすることでスライドの問題が見えて、スライドの作り直しのフィードバックは必ず発生します。発表の1週間前にはスライドが一旦完成して練習をし、そして再度スライドの内容を修正をする、というようなスケジュールで考える必要があります。
一般に準備時間は発表時間とあまり相関しません。短い発表は、時間の融通のある発表と比べて、多数の練習と推敲が必要になります。例えば目安として、以下のようになります:
- ラボミーティング:前日にはスライドをまとめ、自分で見返す;
- 輪講、学会発表(ポスター):1週間前にスライド完成させ、先輩や教員のチェックを受ける。その後、練習しスライドを修正;
- 学会発表(口頭):1.5週間前にスライド完成させ、先輩や教員のチェックを受ける。その後、発表練習を最低2回。想定される質疑応答も考えて、その受け答えもシミュレーションする;
- 面接:2週間まえにスライドversion1が完成。発表練習で評価を受け、さらにスライドの大幅な改定を含めた作り直し。1週間前に大枠完成。そこから発表練習は最低5回とスライドの微調整。想定される質問に対する補足資料を準備し、想定される質問やその受け答えをシミュレートする;
- 授業:事前練習は不可欠。特に板書の場合は、毎回授業前にリハーサルを行うことで初めて内容が頭に入る;
2. 構成:プレゼン作成に向けたメタ知識
ここではプレゼンテーションを作成・準備する際に気をつけるべき知識、特に内容の詳細というよりは、全体として何を意識して作成するべきか?というメタ知識や、プレゼンの構成や概要をまとめる時のチェックリストなどを紹介します。
2-1: プレゼン構成を決める時のガイドライン
作成する時、つねに注意・意識しなければいけない大枠のルールとして以下があると考えています:
- 発表の目的を確認し、オーディエンスの背景などの情報を集める。
- 学会であればその学会の平均的な参加者の知識背景を問い合わせる。
- 面接であれば面接を実施する審査委員の背景を調べる。
- 例えば面接でどんな人が参加するのか?みたいなのを問い合わせること(自体)はルール違反ではない。
- 目的とオーディエンスの事前知識に合わせて、含めるべき情報を明確化・選別する。
- 必要な情報は漏れなく入れ、必要でない情報は漏れなく除くことで聴衆を迷わせない!これが最も重要。
- 「必要か」「必要でないか」はプレゼンの目的に依存するので、同じ成果の発表でもプレゼンごとに吟味する。
- オーディエンスに合わせて、前提とする事前知識とその提示の仕方を変える
- 一般や分野外の聴衆であれば身近な問題、専門家はよりフォーカスされた問題提起などから入る。
- 用語についても、一般であれば(意味が変わらない範囲)で日常用語を、専門家には適切な専門用語を用いて情報を提示する。
- 「知っている情報(事前知識・既出内容)」→「新しい情報」の連鎖でプレゼンを構成する
- プレゼン内では、聴衆が知っていると期待できる語以外は、ちゃんと定義や意味を明確にして使う。
- 逆に、聴衆が知っているはずの語や概念について長々と話さない。
- 進捗型以外は、発表のゴール(新規結果・研究プラン etc)に合わせて、背景や課題を構成しなおす。
- 学生によくある誤解は「自分がやってきた順番をそのまま時系列的に発表の順番にする」という誤り。
- 常に提示したい結果から逆算して、その前提の背景などの発表内容を変えなければいけない。
- オーディエンスの持つ発表者への事前信頼度に応じて、信頼度を保証する情報を提供する。
- 発表者への信頼度が十分でないと、提示された結果に対して聴衆が「信用できるのか?」と迷うことになる。
- 学生は特に、Aという主張や結果が、どういう文献に基づくものなのか?もしくはどういう自分の解析に基づくものなのかをはっきりさせる。
2-2: プレゼンテーションのスタイル
プレゼンスタイルは発表者のキャラクターにも依存するので、人それぞれのスタイルを確立する必要があります。ただ、ある程度使いやすいパターンはあるのでここでは代表的なもの3つと、奨励はされない3つを例示します:
- 結果先行型:背景や課題の後に、主要な結果を先に提示し、結果の詳細や手法などを後で示すスタイル。
- 結果に至る方法の詳細が非自明で、結果を先に出してもネタバレ感が少ない数理系や技術系には向く。
- また学生などが経験値の高い専門家に話を聞いてもらうときなども、相手をイントロなどでダレさせないことが多い。
- 一方で、途中の解析や結果の解釈の仕方で、到達する最終結果や結論が変わりうる自然科学系では、先に結果を示すスタイルは結果ありきに見えてしまうので、適さないことが多い。
- 探索型・謎解き型: ある問からスタートして、「問→解→新たな問→解→以下同様」の連鎖で非自明な解に至るスタイル。
- 自然科学系の研究ではこちらのほうが向いていると思う。
- 自身の研究遍歴の紹介でも使いやすい(どんな疑問を持って、どうそれを解決して、新たに生まれた問から研究をどう発展させたかなど)。
- 一方で、数理系・技術系だと一般にダレた感じになりやすい(結果の前に、前提などをいちいち順番に話されても退屈なことが多い)。
- 穴埋め型:既存研究でやられている部分を表形式にして、未着手の内容(表の埋まっていない所)を明確化し、それを解決するスタイル。
- 研究を単体で発表する際に便利。学生の発表でも新規性を伝えやすい。
- 数理や技術開発に向く。
- カオス型:色々なトピックが入り混じり曼斗羅的に登場する独自のスタイル。
- 発表者の世界観が強く出る。しかしこのスタイルは発表者のキャラを選ぶのであまりおすすめしない。
- また様々なトピックがその人の関わった研究や成果であればいいが、他の人の話を持ってきただけだと説得力が乏しくなる。
- したがって特に若い人や学生にはおすすめはできない。
- ジョブズ型・TED型:発表者やその研究過程・成果への十全の信頼を前提に、詳細や過程を大きく省いてストーリーの面白さや結果のインパクトなどに特化するスタイル。
- アメリカの研究者などで多い。例えばスライドにプロットが1つ大きく出て、軸の名前も何も書いていなかったりする。
- 研究過程の信頼性をしっかり示さなければいけない学生などの研究発表には、全く向かない。
- 経験値のある研究者でも、学会や専門家が絡む発表ではこのスタイルはおすすめできない。
- 共感型:発表者が聴衆の共感を得ることで、結果や主張に対する聴衆の信頼度を獲得し、結果をアピールをするスタイル
- 企業向けのプレゼン本でよく見かけるが、決してアカデミアでは活用してはいけない(例:割烹着を着るなど)。
2-3: プレゼンテーション目的別の主な構成要素とその順序構成:
- 進捗共有
- Labミーティング:「内容まとめや相談したいこと」「前回の進捗のリマインド」「現在の課題」「前回からの差分・試したこと」「今後の計画」
- 輪講(研究発表):「内容まとめ」「背景」「目的」「目的に向けて試みたプロセスと進捗」「現在までの成果」「今後の計画と展望」
- 知識共有
- 輪講(サーベイ):「内容まとめ」「論文著者グループ情報」「分野の背景」「背景」「取り上げた論文の主張と方法」「主張と方法の妥当性」「結果の波及効果」
- 研究成果発表1:研究結果の提示とアピールが中心
- 学会成果発表:「内容まとめ」「背景」「目的」「方法」「成果」「成果の波及効果」(方法と成果は交換可能)
- 研究成果発表2:発表する研究者の業績の提示とアピールが中心
- 修論・博論:「内容まとめ」「背景」「目的」「目的にむけた方法・過程および取り組み」「成果」「成果の波及効果」
- 研究遂行能力と研究プランの発表
- 入試面接:「内容まとめ」「背景」「成果・実績」「実績に基づく研究目的」「目的の解決に向けたプラン」「今後の計画と将来展望」
- 人事面接:「内容まとめ」「背景」「これまでの実績」「これからの課題と計画」「将来展望と波及効果」
- グラント面接:「内容まとめ」「背景」「過去の実績」「目的(課題)」「目的解決に向けたプラン」「過去の実績に基づくプランの妥当性・現実性」「成果の波及効果」
2-4: 研究発表の各構成要素に含めるべき内容の詳細
- 内容まとめ:発表のキーワードとメッセージ。構成を簡潔に1枚程度で提示
- 可能な限り入れたほうが良い。
- 目次ではないので、「背景、手法、結果、考察」について話します、みたいなものでは意味(情報量)が無い。
- 「今日は、***について***ということを話します」的なもののほうが良い。
- Lab meetingでは「今日は、***について相談したい」などもよい。
- 前回のリマインド:前回までの結果を簡潔にまとめることにより、聴衆の記憶を呼び起こし、これから話す課題や問題を共有する
- 1回限りの発表では不要。
- Labの進捗報告ではとても大事。自分が覚えていることを周りの人が覚えているとは思わないほうがよい。
- また授業などでもリマインドは効果的。
- 背景・分野の背景:研究の動機や課題、問の前提となる知識を提示する
- 「大きな一般的な問い」→「個別の専門的な問い」へとブレイクダウンして、話したい問題へ接続する。
- 聴衆の事前知識に基づき、利用する単語や記述の詳細を変える(例:専門家向け→Anterior side、一般・非専門家向け→お腹側)。
- その後に続く研究課題が自然と導かれるように構成する
- 場合によっては、背景で「今後の課題」などにもつながる伏線を貼る場合もある
- 穴埋め型プレゼンなら、先行研究をここで紹介する
- 背景に基づく目的の提示:背景に基づき、目的を提示・定義する
- 目的は背景から自然と導かれるものであるべき。逆言えば目的が自然と導かれるよう背景を構成する
- 研究成果に対応するうように目的を提示・定式化する。成果に対応しない目的は提示しない(それは展望に入れる)。
- 研究結果・成果:結果とその新規性を、聴衆が望む解像度で明確に示す。
- 探索型・謎解き型の場合は「目的から小さな問、方法、部分結果」をつなげて主結果につなげる
- 結果先行型プレゼンでは目的とともに主要成果を提示する。
- 新規性は、自身のオリジナルのアイディアや技量が貢献した、過去の研究との差分を明確にして示す。
- 特に学生は、Labの指導教員やLab自体のテーマの中での自分の独自部分を明確になるようにする
- また複数人で実施した内容の場合も、本人のアイディアや技量がどれだけ反映された成果を明確にする
- 「これは革新的なんです」「これは新しいんです」みたいなセリフがでるのはあまりおすすめできない(効果が無いわけではないが)。むしろ、結果に革新性や新規性があることが自然に伝わるように導入から背景・目的をうまく構成すべき。
- 方法、成果達成したプロセス
- 方法の妥当性や信頼性を聴衆が望む精度で判断するのに必要十分な情報を提示する
- 例えば、Aという結果に至る方法を提示するときに「aという方法だけではなくbという別の方法でも再現できている」「複数回の実験でも再現できている」「シミュレーションの結果は解析解と一致している」などを必要に応じて示す。
- 輪講(文献紹介)などでも、文献の結果や数式をそのまま提示するのではなく、他の論文の内容を併記したり、別の導出を独自に示したりすることで、発表者本人が発表文献の主張と手法の信頼度に対して、検証を十分行っていることを示す。
- 方法の困難な点・新規な点を、簡単な点・既知の点と区別して提示する。
- 学生の場合例えば「どこを最も工夫したか」「どこが最も難しい点か」「どこが新規なアイディアで克服できたのか」「なぜそれを自分だけができたのか」などを明確にする。
- 逆に人の知見をそのまま利用した部分については、文献などを適時引用し、明確に区別する。
- 方法の妥当性や信頼性を聴衆が望む精度で判断するのに必要十分な情報を提示する
- 成果の波及効果
- 聴衆の興味の持つ点に留意して波及効果を示す。一般向けなどは社会への波及効果、学会や専門家には分野への波及効果、人事などでは必要に応じて申請している研究機関のミッションなどへの波及効果を示す。
2-4: 面接関連で含めるべき追加の要素の詳細
- 過去の実績、これまでの研究実績、研究成果・実績:
- 人事面接では、自分の研究遂行能力(論文、予算獲得)とともに、個別の研究の間に存在する一貫性を示せるとさらによい。
- 例:「私は一見異なる研究A、B、Cでこのような業績を残してきた。実はA、B、CはXという観点ではつながっており、自分はXを目指して研究をしてきた。」
- グラント面接では、過去の実績は研究課題に対応して構成する。自分の優秀さというより、提案課題を達成するのになぜ自分でなければいけないのか示す。
- 例:問題Aの解決にはXという技術が不可欠。私はこれまでXという技術の発展に貢献し、現時点で世界でも最先端の技術を持つ
- 例:大きな問題Aの解決に向けて、これまで、a→ b→ cという経緯でこの問題に取り組んできた。この我々の達成したcを発展させることでAの解決に向けて大きな展開が見込める。
- 残念な例:私はこんなにハイインパクトの論文を多数書いていてとても優秀なので、このプロジェクトの問題も解けるはず(実際に面接で見たことのある例)
- 人事面接では、自分の研究遂行能力(論文、予算獲得)とともに、個別の研究の間に存在する一貫性を示せるとさらによい。
- 自身の実績に基づく研究目的:
- グラント面接などでは、これまでの実績に基づき、次の研究目的として浮かび上がる重要課題を提示し定義する。
- 課題解決の試み・進捗、課題解決にむけた方法・過程および取り組み、課題解決に向けたプラン
- 研究プロジェクトの場合、具体的なプランを実現可能性や考えられる困難な点を含めて、提示する
3. プレゼン作成・発表のチェックリスト
プレゼン作成時における具体的なTipsと注意点をチェックリスト的にまとめます。
3-1: プレゼンテーション作成時のチェックリスト
- プレゼンの概要やアウトラインをテキストで作成する(例:このメモ)
- 超専門家の前でのプレゼン以外では、相手は高校生くらいだと思って準備する
- 1スライドには原則1メッセージ・1つの主情報をもりこむ
- プレゼン時間が短い場合はこの範疇ではない)
- 各スライドにそのスライドのメッセージタイトルを入れる
- プレゼン全体のスライドタイトルだけ追って発表全体が想像できる必要がある
- 図や論文のリファレンスは必ず個別に入れる
- 既存研究の結果と自分の結果をしっかりと区別して提示する
- 軸のラベル情報は必ず入れる
- スライドのページ番号も入れる(質問者がスライドを参照できるように)
- 上→下、左→右、左上→右上→左下→右下の人間が自然とスライドをみる順番で情報を配置する
- 不要なもの、特に思考の流れを妨げるものは見せない
- アニメーションなどの活用する。
- 引き算の発想。ただし必要なものまで省いてはいけない
- 異なるカテゴリー・階層情報は、文字サイズ・カラーやスタイルで統一的に分類する
- 概念やアイディアの共有には図を積極的に活用する
- すべての要素(文字・図・スタイル・アニメーションetc)に意味をもたせる。
- 意味のないものは載せない
- 用語は聴衆に合わせて選択する
- 一般向けには専門用語を避ける
- 専門家向けには分野でコンセンサスが取れている用語を用いる。
- すでにコンセンサスの取れている専門用語があるのに、自作用語を使ってしまうのは一番まずい。
3-2: プレゼンテーション発表や練習時のTips
プレゼン発表や練習において注意すべき事項をチェックリストとしてまとめます:
- 話す内容を文字で一度起こす。
- スライドは見ないで話せるように練習をする(特に面接など)。
- ポインターを必ず使う。ただし、使わない時は消す。ぐるぐる回したりするのはやらない。気が散る。
- 聴衆を見て、反応を見ながら話す
- 話す内容のキーワードをプレゼンに埋め込む(話忘れを防げる)
- 練習で終了時間1分前に終わる程度がベスト(当日余裕を持って話せる)
- 発表の重要度に応じて、早めにLabメンバーや教員に発表を見てもらう(自分が思っているほどプレゼンはうまくない)
- 発表練習をしてみて問題があれば、大幅に構成を変えることも考える(そのために時間的余裕を持って準備する)
4. その他の参考文献
ここでは触れられなかった、スライドの具体的なデザインの仕方や生理の仕方などをあつかった参考文献やリンクです。