このノートは、定量生物学研究室の大学院生、そして研究員向けにプレゼンテーションのポイントをまとめたものです。
プレゼンテーションのデザインの仕方とか細かい部分についての解説本などはよく見られるようになりましたが、そもそもプレゼンテーションの構成や準備の時に気をつけなければならないメタな知識について、あまりまとまっている成書やサイトが見つからなかったので、作成しました。
解説文章というよりは、チェックリスト的なもののために散文的になっています。もしかしたら、個々のシチュエーションでのプレゼン形式に合わせて、そのうち文章をまとめることもあるかもしれません。
文責は小林。また作成に当たり、二階堂 愛氏、舟橋 啓氏、そして定量生物学の会のメンバーに助言を頂きました。
プレゼンテーションを作成する時に気をつけることをまとめます。プレゼンは実は多様な形態があり、プレゼンの「目的」「聴衆」そして聴衆が発表者に持つ「信頼度」、さらには「発表時間」に依存してどういう内容にすべきかがある程度決まります。以下ではそれを概説します。
プレゼンテーションと一概にいっても様々な形態があります。
実はその内容に応じて必要とする情報が大きく異なるので、それを解説します。具体的なプレゼンの機会は以下の通りです:
目的に応じてプレゼンテーションの形態は変わります。発表に盛り込むべき内容には、背景知識、研究過程、新規研究成果、過去の実績、今後の計画、研究の波及効果、など様々な要素があります。同じ結果を発表するときでも、目的に応じて最も重視すべき要素や内容、そして情報の提示の仕方が異なります。以下では代表的なプレゼン形態をその目的に応じてカテゴリー化しました:
「誰が何を期待してあなたの話を聞くのか?」「 オーディエンスがどんな事前知識を持っているのか?」「何を面白いと思うのか?」に基づき、特にイントロダクションや結果の提示の仕方や展望は変わります。
例えば、聴衆が、数理系なのか? 生物系なのか? 物理系? それらの混合か? 全く分野外や完全に 一般の聴衆なのか?などの条件に応じて、発表者が聴衆に期待できる事前知識の範囲を明確に意識して、情報を提示する必要があります。
また発表がLab内の発表なのか、 学会での発表なのか、 面接や 一般むけのものなのか、でオーディエンスが発表者に(提示してくれると)期待している情報は変わります。この期待される情報に応じてプレゼンテーションの内容を取捨選択する必要があります。
あまり意識されませんが、オーディエンスの事前知識の中で「発表者(あなた)に対して事前にどれだけ信頼度を持っているか」は大きく発表や特に手法などの提示の仕方に影響を与えます。すでに高い信頼度を担保できていれば手法を概略的にして結果を中心に話せますが、信頼度が担保できない場合、正確かつ信頼できる手法で結果や成果を導いていることを発表の中で示す必要があります。
主要な結果や主張とともにこの信頼度を担保する情報がうまく提示できないと、結果や主張を聴衆に受け入れてもらえない、ということが起こります。これは特に学会発表や面接などで重要になります:
聴衆が一定期間に受け取れる情報量は限界があり、それに合わせてスライド数も調整が必要です。発表時間に応じたスライドの枚数の目安は大体以下の通りです:
これ以外に想定される質問に対する答えや補足スライドを用意があります。特に面接などではそれらの準備は必須です。
発表の準備時間は、経験値と発表の重要度に依存します。特に発表練習は入念にやる必要があります。発表は練習でしかうまくなりません。
発表の準備は「スライド完成→発表練習→本番発表」の単純な一方向カスケードではありません。発表の練習をすることでスライドの問題が見えて、スライドの作り直しのフィードバックは必ず発生します。発表の1週間前にはスライドが一旦完成して練習をし、そして再度スライドの内容を修正をする、というようなスケジュールで考える必要があります。
一般に準備時間は発表時間とあまり相関しません。短い発表は、時間の融通のある発表と比べて、多数の練習と推敲が必要になります。例えば目安として、以下のようになります:
ここではプレゼンテーションを作成・準備する際に気をつけるべき知識、特に内容の詳細というよりは、全体として何を意識して作成するべきか?というメタ知識や、プレゼンの構成や概要をまとめる時のチェックリストなどを紹介します。
作成する時、つねに注意・意識しなければいけない大枠のルールとして以下があると考えています:
プレゼンスタイルは発表者のキャラクターにも依存するので、人それぞれのスタイルを確立する必要があります。ただ、ある程度使いやすいパターンはあるのでここでは代表的なもの3つと、奨励はされない3つを例示します:
プレゼン作成時における具体的なTipsと注意点をチェックリスト的にまとめます。
プレゼン発表や練習において注意すべき事項をチェックリストとしてまとめます:
ここでは触れられなかった、スライドの具体的なデザインの仕方や生理の仕方などをあつかった参考文献やリンクです。